チビとのこと。
まぁ、祖母は恨みをいだいていたに違いない。
飼っていた雑種の「チビ」というオス犬に、噛みつかれる事件が起きた。
わたしが幼稚園児くらいの頃。
家の外が騒がしいとおもったら、祖母が血まみれになっていた。
急所を狙われたのだ。
大の大人が数人で、チビを追いかけまわしていた。
ほどなく、救急車で運ばれた祖母。
わたしは祖母を心配しながらも、
なぜ噛まれるようなことをわざわざしたのだろう?
と、子どもながらに考えあぐねいた。
そして、チビはあらゆる大人を噛み、保健所行きが決まった。
わたしは、最後まで
チビはじぶんを噛むことはない。
と、確信があった。
チビとの最後の日。
大人の目を盗んで、チビをなでた。
チビはこんなに大丈夫なのに…
とおもいながら。
チビをなでた。
次の日、わたしが帰宅すると、チビはもういなかった。