アベルのあかちゃん。
「チビ」の後任で、
母の実家の犬「コロ」から生まれたあかちゃんをもらった。
わたしは「アベル」と名付けた。
メス犬のアベルは、わたしにたくさんのことを教えてくれた。
外で飼っていたため、毎年あかちゃんを生んでくれた。
わたしは、いぬは毎年あかちゃんを生むものだと勘違いをしていたくらいである。
はじめて、アベルがあかちゃんを生んだ日をわたしは忘れない。
あんなに生まれたてがかわいいとは!!
アベルを刺激しない程度に、犬小屋に張りついていたわたし。
次の日も、「あかちゃんをみたい」というおもいで、寝床についた。
翌朝、犬小屋をのぞいてみると、もうあかちゃんの姿がなかった。
アベルの表情もおかしい。
近くにいた祖母に尋ねると、
「袋に入れて、川に捨ててきた」
と、いう残酷な言葉がひょいととんできた。
アベルは、2週間、昼夜問わず、泣き吠えていた。悲しみと憎しみがこめられている声にしか聴こえなかった。